めっき・塗装鋼板は、誤った使用をすると腐食が発生することがあります。
めっき・塗装鋼板の優れた性能を発揮させるために、以下の注意点を熟読され、正しい使用方法・用途にてお取扱いくださいますようお願いいたします。
お施主様へ
雨掛かりしにくい部分での早期腐食にご注意ください。
雨がかかりにくい部分においては、塩分や酸性の腐食原因物質が雨で洗い流されずに濃縮され、腐食が進行してしまうことがあります。
そのため、軒下、庇やバルコニーの下等の雨がかかりにくい箇所は定期的に水をかけ、腐食原因物質を洗い流すことを推奨いたします(水洗いの際には屋内への漏水に注意ください)。
雨のかからない部分で汚れが溜まる訳
対策
雨掛かりしにくい部分での早期腐食事例
設計、加工・施工業者様へ
壁材と水切部材との水抜け用の隙間を確保してください。
壁材と部材の取合い部分において水抜け用の隙間を確保しておかないと、鋼板端部に水が溜まりやすくなり、壁材の鋼板端部からの腐食が発生しやすくなります。
そのため、壁材と部材との間には水が抜けるような隙間を確保してください。(10mm程度/金属サイディングマニュアルより)
コンクリートとの接触を避けてください。
コンクリートは水に濡れるとアルカリ成分が溶出し、接触している鋼板のめっき層を溶解させます。
コンクリートとは絶縁させるとともに、雨水や結露の水分が浸入しないような構造を確保してください。
コンクリートとの接触による腐食事例
異種金属との接触による電食にご注意ください。
金属は一般的に、異なる種類の金属との接触により、どちらか電気的に卑な金属の方が腐食します。この現象は「電食」と呼ばれます。
電食はガルバリウム鋼板、エスジーエル、塗装鋼板でも発生します。よく見られるのは銅やステンレスとの接触により腐食し、穴あきに至るケースです。
接触せざるを得ない場合は、コーキング、ゴムシート等により絶縁してください。
図はエスジーエルの場合です。
銅板との接触
ステンレス(SUS304)との接触
アルミニウム板との接触
同種金属との接触
防腐・防蟻剤処理した木材との接触腐食にご注意ください。
最近、木材の耐久性を上げるために防腐・防蟻処理された木材が多く使用されるようになってきました。
特に銅を含有する処理剤を含んだ木材と鋼板が接触し、さらに結露水等の水分が介在した場合、非常に短期間で鋼板を腐食させます。
そのため木材との接触部分はルーフィング等により絶縁するとともに、雨水や結露水等が流れ込まないような構造になるようご配慮ください。
屋根の緩勾配による水溜まりにご注意ください。
折板屋根の施工において3/100以下の緩勾配の場合、屋根のベコツキ部等に水溜まりができる可能性があります。
そのため、施工の際には水溜まりができないように十分な勾配を確保するようお願いします。
異ロット品の同一面への張り合わせはできるだけ避けてください。
ロット間での外観や色調のバラツキの低減については安定化に努めていますが、異ロットを同一面で張り合わせた場合、色違いに見える場合があります。
そのため異ロット品を同一面で張り合わせることはできるだけ避けていただいた方が安全です。
やむを得ず張り合わせが生じる場合は、部材への転用や、目立ちにくい部分でのご使用等のご配慮をお願いいたします。
同一方向に成型・施工されるようご注意ください。
方向違いによる色違いの例 とくにメタリック系の色相は見る方向によってはまったく違う色に見える場合があります。同一方向に成型・施工をされるようご注意ください。
施工時のすべり落ちにご注意ください。
成形品を屋根上にのせる場合、すべり落ちることがないよう、すべり止めなどの処置をしてください。
施工時の傷付きに注意ください。
土のついた靴で鋼板上を歩行したり、成型品の取り扱いが粗い場合などで発生したキズ付き部分より腐食が発生する例が見受けられます。
施工時には鋼板へのキズ付きに十分ご注意ください。
施工後は鋼板表面を清掃してください。
施工時の切粉、ビス・番線の置き忘れやアンテナ固定用針金等が錆びることによって、もらい錆となる可能性があります。
そのため、施工後は屋根上に残留物がないよう清掃を実施し、針金等のもらい錆にご注意願います。
その他ご使用上の注意
1. 運搬
製品の運搬や倉庫及び施工現場での搬入、搬出の際は、ワイヤーロープを直接掛けないでください。
2. 保管
屋内で梱包をしたままの状態で保管してください。もし、やむを得ず野積みをする場合は、直接地面に置くことのないようにし、防水シート掛けをして長時間にならないようにしてください。もし、水濡れした場合は、速やかに成形し、乾燥させてください。成形品をきっちり積み重ねたままで水濡れさせることも禁物です。
3. 取扱方法
鋼板同士を過度に擦り合わせると、裏面塗膜が表面にとられ汚れとなりますのでご注意ください。また、地面の上や凹凸のある所を引摺ったり、鋼板や尖った金具、鋭利な刃物を当てて傷や摺傷を入れないでください。傷が入りますと美観を損なうだけでなく、耐久性にも影響しますので十分ご注意ください。
4. 補修
万一誤って傷がついた場合は、専用補修塗料で補修してください。なお、補修塗料は、当社に用意してありますので、販売店にご相談ください。但し、補修部は、全く同一にはなりません。なるべく傷をつけないように注意して取扱ってください。補修方法については、各製品のカタログをご参照ください。なお、塩害地などでは、切断部の端面補修をお勧めします。
5. 成形加工
ベンダー加工、ロールフォーミング、プレス成形などの加工を行う場合、加工部の塗膜が剥離しないよう緩かな加工Rになるようご配慮ください。また、寒冷時での加工は、加温加工を推奨します。ロール成形の場合、ロール状況によって塗膜に傷をつける場合があります。成形前にロールの汚れ、異物付着及び当て傷などをチェックして手入れをしてください。
6. 取付け金具
取付け金具の材質選定に際しては、異種金属接触に伴う腐食の懸念があるため、 耐食性のご配慮をお願いします。塩害地域などでは、プラスチック製キャップや防水パッキンの併用、防水塗料の塗布など、接触部に水が入らないようにしてください。
7. 屋根勾配
屋根に施工する場合、水溜まり箇所ができないように屋根勾配にご注意ください。
8. 汚れの除去
油などの汚れは、家庭用中性洗剤で除去してください。これらで取れない著しい汚れは、少量のアルコールをウエスにしみ込ませて拭き取ってください。拭いた後は、水洗いしてください。
9. コーキング材
コーキング材は、めっき・塗装鋼板の耐久力に見合う高品質の製品をご使用ください。現在市販されているコーキング材の中では、シリコン系または変成シリコン系の製品をお勧めします。なお、使用に際しては、プライマーの必要なものもありますのでコーキング材のメーカーとよくご相談ください。
10. 切粉・鉄粉の除去
屋上作業による鉄材の切屑、切粉、釘などを放置しますと、鋼板表面の塗膜上で赤錆が発生し、腐食を早める原因となります。できるだけ早く水洗いしてください。これでほとんど落ちます。同様の現象として、鳥の糞、砂、泥、有機物(木の葉)などの堆積も塗膜に有害です。その都度清掃してください。
11. 金属粉末の多い環境での表面変色
周囲に金属取り扱い工場やスクラップ工場・置き場等があり鉄粉などの金属粉末が多く飛来する環境では表面変色に至り洗浄等でも汚れが落ちなくなることがあります。金属粉末が多く飛来する環境のご使用は十分にご注意ください。
12. 下地材
塗装鋼板の裏面は、防錆処理を十分配慮して設計していますが、断熱、結露防止、防水などに十分ご注意ください。
13. 下葺材との接合
防腐剤処理した木材又は合板は、めっき鋼板及び塗装鋼板の耐食性に影響する場合がありますので、直接木材又は合板に接触する部分(軒先、けらば、棟包み、雨押え、降り棟、谷部等)には絶縁用下葺(ルーフィング材又はブチルテープなど)で防錆して下さい。
14. 化学・電食作用
濡れたコンクリートや湿った木材、銅や鉛などの異種金属が接触するような施工は避けてください。
15. 鉛筆等での墨出し
鉛筆等に含まれる黒鉛は、導電性が高いため、鋼板に付着すると、腐食の原因となります。墨出しには黒鉛を含まない色鉛筆等の使用をお勧めいたします。
16. 雨がかりのしない部位の洗浄
雨がかりのしない庇の裏面や軒裏などの部位は、塩分及び不純物が付着して流されないため腐食が早く起ります。このような部位は、定期的に水洗いすることが耐久性を長持ちさせる秘訣です。
17. 施工上の注意
成形品を屋根上にのせる場合、すべり落ちることがないよう、すべり止めなどの処置をしてください。
18. クロメートの溶出
鋼板の裏面については、常時濡れる環境下では塗膜中に含まれるクロメートが溶出する可能性があります。ご使用の際は裏面側が常時水分に曝されないような設計、もしくはご使用上の配慮をお願いいたします。